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赤坂の社労士事務所

福岡市中央区赤坂の社労士事務所「赤坂経営労務事務所」の
COLUMNです。
労働・社会保険の諸手続や助成金活用、給与計算、就業規則の
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社会保険労務士法人赤坂経営労務事務所
代表社員 大澤 彰

豊かさに慣れた人材の活性化は

経営

 従業員満足とは、顧客満足に対比される概念で、従業員の業務内容や職場環境、人間関係などに対する満足度のことをいいます。
 この 「従業員満足」という言葉を聞く機会が増えました。
 「顧客満足」の間違いではなく、確かに従業員満足なのです。そして、そんな言葉を使うのではなくとも、たとえば従業員の幸せを考えなければ経営は難しいなどという言い回しを聞く機会が増えているのです。
 何もかもが複雑化する中で、自分一人でできることが減ったと感じる経営者が多く、それが従業員に対する姿勢の弱さにつながっているようにも思えるわけです。
 もちろん誰もが孤立しては生きられませんから、他者の助けを必要とすることは決して悪くはありませんが、そうした孤立を避けるために従業員を頼る形で従業員満足を考えるなら、やや不適切であるように思わざるを得ないのです。
 たとえば訪問販売を業とする甲社のケースです。甲社の社長は、コツコツと訪問営業を重ね、今では30人の企業を形成した人ですが、数年前、訪問営業はいつまでも自分がやるべきことではないと感じられたそうです。
 そこで訪問営業の従業員を雇って組織を作り、ご自身は管理や指導をする側に回られたのです。
 そんな時に、社長は従業員満足を考えるセミナーに参加して、共感した社長は不満な従業員と対話をするマネジメントに取り組まれたのだそうです。
 従業員満足の第一歩として、経営者が従業員の問題を聞き、それを解決することを、そのセミナーでは勧めていたそうです。
 当然、社内対話は大きな成果を見せるはずでした。さらに甲社では対話だけではなく、より個人業績に報いるための賞与制度の変更も行うことにしたのです。
 しかし、同社の販売員の反応は冷ややかでした。もちろん人それぞれに理由は違いましたが、2つの反感が支配的だったようです。
 その1つは、いろいろ話を聞いてもらっても、結局は自分が訪問販売に出かけることは変わらない。それなら対話で時間つぶしをするより、さっさと出かけた方がましだという感覚で、もう1つは、いかに業績連動の賞与体系ができても、売上が悪ければ賞与はもらえないというあきらめ的感覚です。

 社長が受けた従業員の2つの反感には、単なるやり方を超えた問題が潜んでいるように思います。
 そこには、豊かさに慣れた人材が従来の方法では活性化されないという時代背景的なことも含まれているのです。

 まず重要なことは、満足を気分の問題としては捉えないことでしょう。いかに説得や激励が一時的に効果を発揮しても、現実にイヤなことを継続させられるなら満足は長続きしないからです。
 もちろん、イヤなことはしないというのはわがままに過ぎませんが、そのわがままを押し殺すほどのハングリー精神は、もはや存在しにくいのも事実です。

 具体的には、成果を出したらもっと得られるというアメ式の動機付けでは、今の人材は乗って来ないというのです。むしろ、「君には期待している」といったん思い切って評価し、できない時に「どうしてくれる」と迫る方が効果的だというわけです。
 これを賞与等に当てはめると、成果を出したら上がるよりも、成果を出さなければ下がるという印象の方が、効果が大きいという意味でしょう。もちろん報酬全体が下がるなら会社を辞めるというケースもあるようです。
 いずれにせよ、社長は現場に任せるのではなく、上が管理指導をしやすいように仕事の進め方を変えてみることは、想像以上に重要であると話しておりました。
 2つ目の賞与の問題はどうでしょうか。社長によれば、たぶん今、もっと欲しいという時代ではないのだろう。むしろ得たものを失いたくないというのが豊かな時代の特徴ではないかと話しておりました。
 従業員満足を漠然とした感情の問題ではなく、日々の仕事の方法の改善と守るべきものを作ることだと言い換えるなら、何をすべきかが少し見えやすくなるのではないかと思うのです。

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