給与の締日・支払日は、末締、翌月払いとなっているのですが、月末に退職した社員から先月分の給与を早く支払って欲しいと請求がありました。会社としてはこれまでこういうケースがなかったことと、支払日にはきちんと払うのだから、何を勝手なことを言っているのかと思いながら相談したということです。
これについて、労働基準法に次の規定があります。
「使用者は、労働者の死亡または退職の場合において、権利者の請求があった場合においては、7日以内に賃金を支払い、積立金、保証金、貯蓄金その他名称のいかんを問わず、労働者の権利に属する金品を返還しなければならない(労働基準法第23条)。」
会社としては、この規定により7日以内に支払う必要があります。
ただし、この賃金または金品に関して争いがある場合においては、異議のない部分を、7日以内に支払い、または返還することになります。
ここでいう争いがある場合とは、時間外労働時間数が会社の計算と労働者の主張が食い違う場合とか、出来高払制の部分の出来高についての主張が食い違うような場合が考えられます。
この規定を設けたのは、労働者が退職した場合に賃金、積立金その他労働者の権利に属する金品を迅速に返還させないと労働者の足留策に利用されることもあり、また退職労働者または死亡労働者の遺族の生活を窮迫させることとなるので、退職労働者等の権利者からの請求があった日から7日以内に賃金その他の金品を返還すべきこととしたものです。
このほかよく問題となるケースとして退職金がありますが、就業規則等で支給条件が明確な退職金は賃金と解されますので、請求があれば7日以内に支払わなければなりません。ただし、就業規則等で支払期日があらかじめ定められている退職金については支払期日がきてから支払っても違反とはなりません。
退職時の賃金については上記の規定がありますが、給与計算は短期間に集中的に行う必要があり、計算の分散は担当者の大きな負担になります。前記の趣旨に該当しない場合には、通常の支払日まで待っていただきたいものです。
退職時の賃金の支払い
