6f62966b1de45c12514a6c6fa30f94fb_m-1
赤坂の社労士事務所

福岡市中央区赤坂の社労士事務所「赤坂経営労務事務所」の
COLUMNです。
労働・社会保険の諸手続や助成金活用、給与計算、就業規則の
整備、評価・処遇制度の構築など、人に関わる分野から経営を
サポートいたします。
社会保険労務士法人赤坂経営労務事務所
代表社員 大澤 彰

日本企業の人事制度とジョブ型雇用

人事・労務

 近年、「ジョブ型雇用」という言葉を耳にする機会が増えています。政府の政策の中でも、企業の競争力強化のための人事制度としてジョブ型人事や職務給の導入が取り上げられ、大企業を中心に制度改革の議論が活発になっています。
 しかし、日本企業の雇用制度は長年「メンバーシップ型雇用」を基盤としてきました。
 ジョブ型雇用は本当に日本企業に適した制度なのでしょうか。ここでは、メンバーシップ型雇用とジョブ型雇用の特徴やメリット・デメリット、そして職務給制度の歴史を整理しながら、日本企業の人事制度の方向性について考えてみたいと思います。

最近よく耳にする「ジョブ型雇用」

 最近、新聞やビジネス誌などで「ジョブ型雇用」という言葉を目にする機会が増えました。
 企業の人事制度の改革を語る際に、この言葉が取り上げられることが多くなっています。政府の政策の中でも、企業の競争力を高めるための制度としてジョブ型人事や職務給の導入が提唱されています。
 こうした議論を見ていると、「日本企業の雇用制度は本当にジョブ型へ移行していくのだろうか」という疑問を感じる方も多いのではないでしょうか。
 この問題を考えるためには、まず日本型雇用の特徴を理解する必要があります。

日本企業の基本モデル「メンバーシップ型雇用」

 日本企業の雇用制度は、一般的に「メンバーシップ型雇用」と呼ばれています。
 この制度では、企業は職務を限定して社員を採用するのではなく、会社のメンバーとして採用します。新卒一括採用で入社した社員は、営業、企画、管理などさまざまな部署を経験しながらキャリアを形成していきます。
   人事ローテーションや配置転換を通じて幅広い業務経験を積み、企業全体を理解した人材を育成する仕組みです。終身雇用や年功的賃金と結びつき、日本型雇用の基本的な枠組みとして長く続いてきました。

メンバーシップ型雇用のメリット

 メンバーシップ型雇用のメリットとしては、次のような点が挙げられます。
 ・企業の状況に応じて人材配置を柔軟に行える
 ・長期的な人材育成が可能
 ・幅広い業務経験を持つ人材を育成できる
 ・社員の組織への帰属意識が高まりやすい
 企業にとっては、人材を長期的に育成しながら組織運営を行えるという利点があります。

メンバーシップ型雇用のデメリット

 一方で、次のような課題もあります。
 ・職務内容が曖昧になりやすい
 ・成果と処遇の関係が見えにくい
 ・専門人材が育ちにくい
 ・長時間労働につながりやすい
 近年、IT人材など専門性の高い人材の重要性が高まる中で、この制度だけでは対応が難しい場面も増えてきています。

ジョブ型雇用とは何か

 これに対して、欧米で一般的なのが「ジョブ型雇用」です。

 ジョブ型雇用では、企業はまず「どのような仕事が必要か」を定義します。そのうえで、その仕事を遂行するために必要なスキルや経験を明確にし、その条件に合った人材を採用します。
 つまり、
 仕事に人を合わせる雇用制度
 と言えます。

 職務内容は職務記述書(ジョブディスクリプション)として明確に定められ、その職務の責任や役割が明確になります。

ジョブ型雇用のメリット

 ジョブ型雇用のメリットとしては、次のような点が挙げられます。
 ・職務内容と責任が明確になる
 ・成果に基づく評価が行いやすい
 ・専門人材を確保しやすい
 ・キャリア形成の自由度が高まる
 特に専門職にとっては、自分のスキルを活かせる仕事を選びやすくなるという特徴があります。

ジョブ型雇用のデメリット

 一方で、ジョブ型雇用には次のような課題もあります。
 ・人材配置の柔軟性が低くなる
 ・専門人材の採用が難しい
 ・組織が縦割りになりやすい
 ・職務が変わらなければ賃金が上がりにくい
 また、日本企業の人材育成は企業内教育を前提としているため、ジョブ型制度との整合性を取ることが課題となる場合もあります。

日本で職務給が定着しなかった歴史

 実は、日本で職務給制度の導入が議論されるのは今回が初めてではありません。
 戦後まもなく、日本企業でもアメリカ型の職務給制度の導入が試みられました。しかし、結果として広く定着することはありませんでした。
 その理由としては、
 ・年功的賃金制度との不整合
 ・人事ローテーションとの相性の悪さ
 ・一人が複数の役割を担う日本企業の働き方
 などが挙げられます。
 つまり、日本企業の組織運営や人材育成の仕組みと職務給制度は必ずしも相性が良くなかったのです。
 この歴史を振り返ると、制度を導入するだけでは十分ではなく、日本の雇用慣行に合った形で運用していくことが重要であることが分かります。

実務の視点から考える

 人事制度に関する議論を見ていると、日本企業がすぐに完全なジョブ型雇用へ移行することは現実的ではないように思われます。
 多くの企業では、新卒一括採用や企業内教育を前提とした人材育成が行われています。 
   そのため、雇用契約そのものをジョブ型に変更することは容易ではありません。 
   現実には、メンバーシップ型雇用を基本としながら、職務や役割をより明確にする仕組みを取り入れる企業が増えています。
 人事制度は企業文化や経営戦略と密接に関係しています。制度の形だけを導入するのではなく、自社の事業や組織に適した制度設計を行うことが重要です。

まとめ

 ジョブ型雇用は、日本型雇用をすべて置き換える制度ではありません。
 
両者は人事制度の前提が大きく異なるため、日本企業ではそれぞれの特徴を踏まえながら制度を検討していくことが求められます。 
 むしろ重要なのは、
 ・企業がどのような人材を必要としているのか
 ・社員にどのような役割を期待するのか
 ・その成果をどのように評価するのか
 を明確にすることです。

 メンバーシップ型雇用には長年培われてきた強みがあります。一方で、専門性を高める仕組みを取り入れることも必要です。
 今後の人事制度改革は、メンバーシップ型とジョブ型の長所を組み合わせながら、自社の事業特性に合った制度を構築していくことが重要になるでしょう。

Copy Protected by Chetan's WP-Copyprotect.