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赤坂の社労士事務所

福岡市中央区赤坂の社労士事務所「赤坂経営労務事務所」の
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社会保険労務士法人赤坂経営労務事務所
代表社員 大澤 彰

競わせるより、「学ばせる」大事さ

人事・労務

 甲社では、最近の重苦しい状況を打破するために、かつて比較的大きな企業で、営業の最前線を担当してきた人材を招いて、営業力の強化を図りました。招いたのは、営業部長まで勤めた人材でしたが、あまり多くの年俸を用意する必要はなかったそうです。
 しかも、当初は従業員にも好評でした。それは、今まで社長の直属だったから、話さえ聞いてもらえなかったけれど、今度の部長は小さな相談にものってくれるというものだったのです。

 現場での直接指導を任せたかったA社長には、従業員の反応は好都合でした。ところが、そんな好ましい関係は、長続きしなかったのです。
 親身に話を聞いてくれる新営業部長は、同時に個人別に営業成績グラフを掲示することも忘れませんでした。
 アメ(相談にのること)とムチ(成績を明瞭にすること)によるモチベーション管理とでもいうのでしょうか。
 しかし、よくある「成績グラフ」は、半年もたたないうちに、行き詰まってしまいます。
 業績も、新部長就任以前より悪化してきました。

 営業部長に注意を促しても、「やはり中小企業ではダメか。前の企業では当たり前だったのに」と、問題を過去の成功にすりかえてしまうだけで、改善する様子を見せません。
 厳しい時代の「奥の手」として、輝かしい業績を残した優秀な人材を招いたはずなのに。 A社長は、そんな苦々しい経験の後、営業部長に退社を促し、直接組織の建て直しに取り組みました。
 営業部長が、かつて活躍した頃は、、市場が右肩上がりに拡大した時代で、ガンバレばそれなりの成果が出る方が自然だったのです。
 もちろん、右肩上がりの時代にも、そのガンバリの深さや大きさで、様々な差が出ました。しかし、成果に差があっても、適切なガンバリには何がしかの成果がついて来たのです。

 しかし、今日では、いくらガンバッても、それが成果につながる保証はありません。
 そんな状況の中で、ムチを打っても、誰も走ることはできないでしょう。営業部長は、相談にのってくれる人でしたが、その相談から得られる回答は、今の環境からかけ離れた大きな組織での体験談であり、聞く側には、ほとんど理解できなかったのです。
 あれこれ悩んだあげく、A社長は1つの行動に出ることにしました。その行動が、その後の展開に大きな影響を与え、徐々に人材に活力が戻って行ったそうです。

 A社長が最初に取り組んだ「行動」とは、できるB君とできないC君の営業活動の比較でした。
 どこからどのように「見込み客」を見つけ出し、その見込み客にどんな資料とどんなトークで働きかけ、どんなタイミングでどれだけの頻度で訪問しながら、どんなキラートークでクロージングをかけるのか、時には同行しながら把握することに努めました。
 もちろん営業活動中だけではなく、朝や夕方の会社での過ごし方や、趣味の持ち方まで、こと細かく比較したそうです。

 観察結果として、A社長は、「こんな対象に、このタイミングで、この資料をぶつけ、こんなトークをして、この反応を得た時に思い切ってプッシュする」という類の「営業ストーリー」を作ることができました。確かに自分の若い頃とは世の中が変わっており、驚く部分もありましたが、営業の本質は、大きく変わっているとは言えません。
 A社長は、ストーリーを全て営業ツールとして文書化するとともに、トークなどを全員に教えることとしたのです。
 社長が作った営業ツールとトークなどによって、全員がB君のような成績をおさめ始めたわけではありません。ツールやストーリーなどを高いレベルで揃えても、各人の成果には差が残ります。
 しかし、A社長によれば以前よりはずっと差が小さいし、C君までもが問題児でなくなっただけで成果は十分大きいということです。
 ただ結果ではなく、A社長の検討過程にある重要な要素に、私たちは注目する必要があるでしょう。

 今日のように、競争が激しくなると、努力の割には成果が出にくい、なかなか思い通りの成果は出ないということです。
 ところが、今まで当たり前のことができない人が、できるようになるなら、そこには大きな飛躍が生まれます。そして、すでに10の業績を挙げている人に11を求めるより、3の業績しか挙げていない人に、5を求めるほうが、組織全体の成果の増え方は大きくなるのです。難しい時代ほど、底上げが必要だと言われるのはそのためでしょう。
 全員を競わせて、競い合いに強い人だけを伸ばそうとするのではなく、できる人からできない人が学んで、そのマネをする方が、より効果的であるケースが少なくないからです。

 組織内部で競い合って、一番二番を争っても、船全体が世の中の大波にもまれて漂わざるを得ないのが、現代です。
 厳しい環境の中では、競い合いで組織構成員がお互いに力を消耗し合うのではなく、よいところや活動パターンを学び合って、結果として組織全体のパワー向上を達成するという考え方が、ますます重要になるでしょう。

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