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赤坂の社労士事務所

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社会保険労務士法人赤坂経営労務事務所
代表社員 大澤 彰

なぜ仕事を任せられないのか ~個性に応じたマネジメントの実践~

人事・労務

 仕事を任せることは、個人と会社の双方にとって重要です。仕事を任せなければ、個人も会社も仕事を増やしながら質を高めていくことができないからです。他の仕事で手一杯では、経営者やマネジャーはいつまで経っても、彼ら本来の仕事ができません。
 では、仕事を任せることの大切さはわかっているにもかかわらず、なかなか実践できない理由は何なのでしょうか。そこで、任せられない理由と、どうすれば任せられるのかという方法について、考えてみます。

 A社は美容院を3店舗展開している会社です。修行先から独立して構えた1店舗からスタートしました。 独立当初は、毎日A社長含めて3人のスタッフがフル回転しているような、こじんまりとした美容院でした。
 それが現在では3店舗にまで増えたのは、お客さんの要望に応えるだけの技術力があったからです。
 ただ、それだけではありません。A社の発展を語るには、A社長の人当たりの良さを抜きにはできません。A社長は話題が豊富で、どんなお客さんとも話が尽きないのです。リピーターの獲得にこのスキルが大いに役立ちました。

 ここ最近のA社は、新しいコンセプトをもった新店舗を企画中です。A社長はその準備に忙殺されています。
 店舗が増えてくると、A社長は今までと同じように、現場で働く技術者の1人でいるわけにはいかないのは当たり前です。時には自分でカットに入ることもありますが、今は美容師ではなく経営者であるとの自覚を強くもっています。
 それと同時に、新店舗準備中である今痛感しているのが、仕事を任せることに無頓着すぎたことだといいます。

 しかし、A社長はこれまで全く仕事を任せてこなかったというわけではありません。 一部の仕事は、人を選んで任せてきたといいます。そうでなければ、事業を拡大することはできませんでした。
 ただ、A社長が思うのは、自分が仕事を任せた相手が、その先どういうふうに他のスタッフへ任せているかについて、あまりに無頓着だったということです。
 今までは単に指示したことができていれば問題なかったのですが、新たに店舗をオープンさせる今、これまで通りではうまく回らないのではないかという恐れが湧き始めたのです。こうした恐れが、A社長の行動を変えました。

 各店長たちの任せ方を振り返ったとき、2号店店長のBさんをそういう視線で改めて店内を観察してみると、これまでは漠然としか感じていなかった部下たちの個性が明確に見えてきたようです。
 2号店の店長を任せているBさんはオールラウンドプレイヤーです。美容師としてはすべての技術に高い水準を保持しています。その腕を買って、A社長は店長を任せたといえます。
 ただ、Bさんは仕事を任せるのが上手ではないようです。というよりも、必要以上に自分だけでやってしまうタイプです。  部下に任せるべき仕事もBさんが抱え込んでしまっているとA社長の目には映りました。
 ただ、Bさんの心中がA社長には手に取るようにわかりました。

 要するに、自分でやったほうが早いと考えているのです。やらせてみてどうなるかとヤキモキすることも、失敗の尻拭いに時間を取られることもありません。
 しかし、Bさんのやり方が効果を出しているわけではありませんでした。現に、A社長から見た2号店は、Bさんだけが優秀で、スタッフたちは依然として成長していないと感じていました。
 さらに2号店は、指名を多く取るほど歩合給が増えるという体制を取っていました。この体制が、仕事をあまり任せないBさんの態度に拍車をかけてしまっている、という印象も受けました。

 一方で、3号店のCさんはまた違ったタイプでした。Cさんは仕事は任せるのですが、その後は任せきり、もっとはっきり言ってしまえば放ったらかしという状態でした。
 確かに、任せるのは良いことです。しかしCさんは、仕事を任せるということの重要性について十分に認識していなかったようにA社長には見えました。
 本来、仕事を任せる前に、任せる側はそれなりの準備をする必要があるはずです。その意識がCさんにはありませんでした。

 ここでいう任せる準備とは、まずは見極めです。
 相手がその仕事に対してどの程度の経験とスキルを持ち合わせているか、任せる時期は適切か、サポート体制は十分か、そういった見極めが必要です。
 ところがCさんは、こうしたステップを無視していました。やらなければならない仕事があれば手の空いているスタッフなら誰でもその人に頼むという感じです。
 経験のあるCさんから見れば簡単な仕事でも、部下にとっては難しいものもあります。
 それにもかかわらず、Cさんは部下の実力を見極めずに任せて、あとは放置していたのです。

 どちらのケースにしても、A社長は「仕事を任せることの意味」について、各店長と話し合うようにしました。
 仕事を任せるノウハウを覚える前に、まずはその重要性を理解することが大切だと、A社長は考えたからです。

 それに加えて、店長の人事評価は店舗の業績だけではなく、スタッフの教育や成長も評価の対象であることを明確に伝えました。
 こうした取り組みで、会社が店長クラスの人材に何を期待しているか、A社長からのメッセージとして明確に伝わったはずです。

 さらにA社長は、店長などのマネジメントをする側だけでなく、マネジメントされる側にも目を向けるようにしました。
 仕事を任せるという視点で会社を見るとき、どうしても任せるその人に問題がある、という見方がされがちです。
 しかしながら、任される部下のほうに全く問題がないわけではないはずです。
 A社長はその後、観察の目をスタッフ全体にも向けたことで、あることに気が付きました。仕事を任されないのにはそれなりの理由があるということです。 
 A社長の見るところ、確かにこれでは任せられないなと感じるスタッフが散見されました。
 例えば、2号店の1人は「やりたくありません」「それは私の仕事ではありません」と明言するタイプです。
 また3号店では、自分がピンチに陥ると、「あの人が悪い」と他責にするタイプがいました。

 ここで大切なのは、なぜその人が仕事を任されるのを避けようとするのかを知り、個別に対応することです。
 前者の部下に対しては、彼の現時点での適切な業務量を測ることにしました。業務量を越えて任せてしまうことに対する、本人のストレスを考えてのことです。それから、会社が彼に求める役割や責任についても、丁寧に説明しました。
 また後者は、ルーティンワークなどの取り組んだ成果が目に見えやすい仕事を任せ、少しずつ自信をつけさせるようにしました。

 仕事を任せると一口に言っても、「状況×部下の個性」の掛け算であるため、答えは無数にあります。つまり、仕事の任せ方に決まった解答はないのです。
 なぜ仕事を任せられないのか、なぜ任されたくないのかを理解する。仕事を任せる重要性を理解させる。部下の育成が評価基準であることを伝える。これまでのA社の事例で見てきたように、その原因や方法は様々です。
 正解がないからこそ、部下のタイプに合わせて工夫することは大切です。あなたの会社は、いかがでしょうか。

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