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赤坂の社労士事務所

福岡市中央区赤坂の社労士事務所「赤坂経営労務事務所」の
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社会保険労務士法人赤坂経営労務事務所
代表社員 大澤 彰

イノベーションは些細なことがきっかけで起こる

経営

  イノベーションという言葉が当たり前のように使われています。そのイメージは「社会に大変革をもたらす何か」というものです。しかし、うちとは無関係と最初から諦めてしまっている会社も少なくありません。それはもったいのではないでしょうか。イノベーションは些細なことがきっかけで起こるものです。これまでの視点を、他業種まで広げるだけで、イノベーションへのひらめきに繋がることもあります。

 「イノベーション」という言葉が、ビジネスの現場で頻繁に使われるようになっています。そもそもイノベーションとは革新、刷新を意味し、「それまでのモノ・仕組みなどに対して全く新しい技術や考え方を取り入れて新たな価値を生み出して社会的に大きな変化を起こすこと」を指します。
 しかし、「うちはそんな変革とは無縁」とはなから諦めてしまっている企業も少なくありません。会社規模に関わらずイノベーション活動を実施した企業のほとんどは、イノベーションを実現しています。イノベーションは決して大企業ばかりのものではありません。

 会社を新たに興すにはパワーを必要としますが、それはスタートに過ぎません。利益を継続的に上げて、会社を存続させていくには一層のパワーが求められます。
 それはどの業界であっても同じですが、特に飲食業界の栄枯盛衰は激しいと言われます。
 通い慣れた道にあった飲食店がいつの間にか別の店になっていたという経験は誰にでもあるのではないでしょうか。
 飲食業界の場合、開業後2年以内の存続率は約50%です。つまり、2年以内に2軒に1件の割合で店をたたむ結果となっているのです。
 A社もそんな厳しい業界に身を置く会社です。A社は新鮮な海産物を売りにする居酒屋としてスタートしました。
 A社長の実家が鮮魚の仲卸だったことが開業の大きなきっかけになっています。
 創業から店舗は8店舗まで増えていますから、開業2年以内に半分は潰れる飲食業界の厳しい競争を立派に勝ち抜いてきたと言えるでしょう。
 しかしながら、安穏とあぐらをかいているわけにはいかないのはもちろんです。

 新鮮な海産物を前面に押し出した居酒屋はいくらでもありますし、A社よりも安い価格で提供する店も珍しくなくなっています。
 そうした状況に対抗しようと、これまでA社は徹底的にムダを省いて料理の価格を下げたり、新メニューの開発に力を入れたりといった企業努力を続けてきました。
ただ、それらは売上を維持する効果はあっても、飛躍的に押し上げるだけの成果を生むには至らなかったそうです。


 そんな中でA社長が大事にしていたのは家族との時間でした。
 お気に入りはスーパー銭湯だそうです。
 心身をリラックスさせてくれる大きなお風呂を、A社長自身が好きだったというのがまずあります。のみならず、気に入っていたのはスーパー銭湯の施設の充実ぶりでした。
 お風呂の種類は言うまでもありません。他にもエステや岩盤浴など奥さんを満足させる施設もあります。また、縁日を模したスペースやゲームコーナーもあり、まだ小さい子供たちの気もそらしません。

 何しろA社長にとってありがたかったのは、家族で1日中楽しめるという点だったようです。
 しかもそこでは、A社長がいわゆる家族サービスをがんばらなくても済みます。
 それだけの環境が整っているからです。
 その日も家族を連れてスーパー銭湯にお出かけでした。風呂上がり、A社長はゲームコーナーで遊ぶ子供たちの様子を眺めていました。
 ふとその時、居酒屋の風景が目に浮かんだそうです。
 というのも、最近では居酒屋で子供を見かけるのは珍しいことではなくなりました。
家族で外食という場合に居酒屋を選ぶ人たちが増えたからです。
 一昔前なら見られなかった風景ですが、メニューも豊富で値段も手ごろですから、消費者の立場からすれば当然の選択だったのかもしれません。
 ところが、居酒屋がスーパー銭湯ほど家族をもてなしているかといえば、それはできていないとA社長には感じられたのです。
 何組かの家族が居酒屋に集まることはよくあります。大人同士で話が盛り上がると、子供たちは置いてきぼりにされることがあります。
 まだ手のかかる幼児の場合、母親が付きっきりで相手をして、せっかく久しぶりに集まった仲間との時間を十分に楽しめないのもまたありがちです。
 つまり、今や居酒屋は家族サービスの場、家族連れの仲間たちの交流の場にもなっているのに、そうしたニーズに十分に応えるだけの環境作りができていないということです。

 このことに気づいたA社長は早速、スーパー銭湯の真似をし、自社の居酒屋にキッズスペースを併設することを決めたそうです。ただし、その目的は店に来てくれるお客さんがすべて、何の心配事もなくひとときを楽しんでもらうためですから、その場しのぎのものではダメです。
 A社長は社員と一緒に評判の託児所を何度も視察して、子供を預かることの心得を学んだそうです。
 A社はもともと家族連れが多い居酒屋でしたから、効果はすぐに表れました。キッズスペースの存在を知らないで来店したお客さんでも何の準備もなしにすぐに使えます。
 これで、親たちはいつもとは違ったゆっくり感が味わえたことが実感として残ります。

 何の憂いもなく居酒屋での時間を楽しんでもらいたいという思いを形にして、A社の客足は伸びて売り上げも上がりました。
 しかし、突き詰めていくと、まだ不十分なところがあることにA社長は気づきました。行き帰りの足の問題です。
 タクシーや運転代行の連絡先をA居酒屋の壁にも貼ってありますが、大人数の家族連れには対応できません。お酒を飲みたいのにお父さんだけが我慢している場合もあります。
 大人数に対応できる送迎サービスをA社ですれば、お客さんの心配事は確実にひとつ減るはずです。
 このときもA社長の頭に浮かんだのは、スーパー銭湯での光景でした。玄関先で出くわした中型バスから降りてきた団体客の顔がいかにも喜びに満ちていました。
 それはきっと、これから仲間と湯につかって、飲食を共にする楽しみからだったのでしょうけれど、最寄駅と施設を送迎してくれることで、余計な憂いを取り払ってくれたことも笑顔の一因だったと思います。

 イノベーションとは新しい技術や考え方の導入による新しい価値の提供です。革新、刷新ですから創造性が求められますが、ゼロから成し遂げられる創造などありません。
 創造は真似から始まるのです。そして、それはA社のように他業種のやり方を自分たちなりに消化することにより、その度合いを増すこともあります。ただ、そこには新たな創造のきっかけを他業種の中から見つけ出すという視点が必要なようです。イノベーションは些細なことがきっかけで起こるものです。自社の魅力を高める変化は、同業種の中にあるとは限りません。他業種まで視野を広げてみてはいかがでしょう。

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