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赤坂の社労士事務所

福岡市中央区赤坂の社労士事務所「赤坂経営労務事務所」の
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労働・社会保険の諸手続や助成金活用、給与計算、就業規則の
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社会保険労務士法人赤坂経営労務事務所
代表社員 大澤 彰

後発でもチャンスはある

経営

 企業はいつまでも過去の成功に安住しているわけにはいきません。世の中の状況、消費者のニーズは流動的ですから、新たな商品・サービスを開発することなしに生き残っていくことはできないからです。
 新規事業の重要性は各企業が重々承知しているのでしょうが、いざ始めようとすると、「もうやってる会社がある」と気落ちしてしまうことがあります。しかし、どんな状況であってもやれることは必ずあるものです。
 企業にとって新たな事業に挑戦することは重要です。世の中の状況、消費者のニーズは常に流動的ですから、いつまでも同じ商品・サービスでは飽きられてしまいます。
 ですから、企業はこれまで積み上げてきたものを守りながら、新商品や新サービスの開発に躍起になるわけです。
 実際、毎日のように新規事業は生まれています。

 IT・情報通信分野が突出していて業界の元気の良さが際立っていますが、それぞれに新商品・サービスの開発が旺盛です。
 しかし一方で、いざ新しいことをやろうと下調べの段階で、気持ちが萎えてしまった経験はないでしょうか。
 どんな業界の新規事業でも先発企業はあるものです。しかも大手が市場をすでに席巻している場合も少なくありません。
 「我々にやれることは残されているのか」と思ってしまっても不思議ではありません。 しかし、どんな状況でもチャンスはあります。そのチャンスはどこに潜んでいるのでしょうか?


 

「はーい、出来たてのチンジャオロース並びますよー」
 レジのすぐ隣に設けられている鉄板焼きコーナーで作られた熱々の料理が大皿に盛られて総菜売り場に並びます。
 引き寄せられるように、その場に居合わせたお客さんが輪を作り、各自が小分けにされた容器の一角に出来立ての料理を収めるという光景はここでは珍しくありません。
 これだけ見れば、ここはスーパーか、あるいは弁当専門店のように目に映ります。
 しかし、ここはスーパーでも弁当専門店でも、もちろんファミレスでもありません。 
 A社が展開するコンビニなのです。
 A社コンビニの特徴は、「多面的」なところと言えるでしょう。しかし、より正確に言うなら、「局所的」というのが合っているのかもしれません。
 A社はもともと、地元に密着して代々お酒の小売店を営んできました。創業は江戸末期にまで遡ることができるそうです。しかし、歴史があれば繁盛するわけではありません。いま私たちの周りの状況を見ればわかるように、古くから残るいわゆる「町の酒屋さん」を見かけることは稀です。
 町の酒屋さんが減少したのは、コンビニチェーンの登場が大きな原因であると言われています。
 深夜まで営業していて、欲しいものが揃っており、お酒まで買える。町の酒屋さんと比べて便利さが各段に違います。
 お客を取られた町の酒屋さんが、商売敵であるコンビニに鞍替えするのは稀ではありません。酒屋ではもはや立ち行かないという状況がまずあります。
 加えて、酒類を販売するには免許が必要で、一から申請するとかなりの手間がかかります。すでに販売免許を保持している酒屋が大手コンビニチェーンとフランチャイズ契約を結び、リニューアルするのは、行き詰まった酒屋とコンビニチェーン運営側、双方にとって都合が良かったわけです。

 コンビニ襲来の大波を受けたのはA社も例外ではありませんでした。行き詰まりを感じ、町の酒屋さんからコンビニへの商売替えを果たしました。しかし、大手とフランチャイズ契約を結んだわけではありません。代々続いた酒屋を自ら辞めると決めたのは事実ですが、A社が始めたのは独立独歩のコンビニでした。
 そうした決断を下したのにはいくつか理由がありますが、A社長にはフランチャイズという形では、思うような経営ができなくなるという危惧がありました。
 A社長のところにも、コンビニフランチャイズの誘いが持ち込まれたことがありました。話を聞いてみると、これまで販売していた酒類は売ることができなくなり、品揃えと仕入れ先は運営側が決めるとのことです。
 他にもさまざまな制約が課されることが判明して、A社長は見切りをつけました。独自にやろうと決意したわけです。
 ただ、立場を変えてみれば運営側の言うことが分からないわけではありません。彼らがやろうとしていることは、徹底した効率化であることは理解できました。

 もっとも、その理解と自分がやりたいことが必ずしも一致するわけではありません。
 当初は大手にのみ込まれるわけにはいかないとの思いだけだったのかもしれませんが、結果的にA社長がしたことは、効率化つまりは大手の得意分野の逆を行くことでした。
 鉄板焼きコーナーをA社長が設けた理由は、弁当をレンジでチンはあまりに味気ないとの思いからです。ならばうちでは出来立てを提供しよう。それも、お客さんの目を引くように目の前で調理したら受けるんじゃないか。
 たしかにこれは、全国標準のやり方を採用することで効率化しようとする大手コンビニにはできない発想です。やろうとしてもコスト的に合わないと思います。
 また、手作り惣菜の要望が高くなっていったことで、その後オープンすることになる新店舗では、広い厨房施設を備えることになりました。
 さながらスーパーのバックヤードですが、買ったお弁当をボックス席でゆっくり食べられるスーパーなどありません。もちろんそんなコンビニも存在しません。

 A社長がその仕事をなぜ始めたかというと、お客さんに喜んでほしいというのがまずありますが、一方で流通の問題も見過ごせなかったからです。
 名産品が各地に埋もれたままになっている理由は、大手の流通に乗りづらいというのが一要因です。どんなにものが良くても、一定量の生産が約束されなければ取引にまで至りません。そうした食い違いをA社長は解消しようとしているのでしょう。
 考えてみれば、A社のサービスはすべてこの食い違いの解決に基づいています。たとえニーズがあったとしても、効率化の観点から大手コンビニにできることには限界があります。
 もちろん、効率化を推し進めて生産性を上げることで満足させられるニーズはあります。ただそれでも、それだけではすくい取れないニーズが存在するのは事実です。
 大手がすくい取れないニーズに「局所的」に目を向けたことで、結果的に「多面的」に見えるのでしょう。
 どんな業界においても先発企業は存在します。しかし新事業、プロジェクトを始める際、どんなに後発でも、例え大手の壁があっても、そこには成功するチャンスはあるのです。

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