6f62966b1de45c12514a6c6fa30f94fb_m-1
赤坂の社労士事務所

福岡市中央区赤坂の社労士事務所「赤坂経営労務事務所」の
COLUMNです。
労働・社会保険の諸手続や助成金活用、給与計算、就業規則の
整備、評価・処遇制度の構築など、人に関わる分野から経営を
サポートいたします。
社会保険労務士法人赤坂経営労務事務所
代表社員 大澤 彰

ジョブ型雇用と職務給

労働・社会保険・助成金

 政府が打ち出した「働き方改革」によって、多様性のある働き方が求められています。
 それを実現するのが「テレワーク」であり、新型コロナウイルスの影響で、リモートワークやテレワークを進める企業が増えています。

 テレワークが増えるにつれ、ジョブ型雇用が評価体系などテレワークに合った人事制度として注目されています。
 ジョブ型雇用とは、職務をベースにした人材の雇用形態です。
 ジョブ型雇用とは、従業員に対して職務内容を明確に定義し、労働時間ではなく成果で評価する雇用制度です。欧米諸国で広く普及しています。
 ジョブ型雇用との対比で用いられるのが、「メンバーシップ型雇用」です。職務内容や勤務地を限定せず、スキルよりも会社に合う人材を雇用する制度のことで、日本ではメンバーシップ型雇用が一般的です。
 メンバーシップ型雇用が「会社に人を合わせる:適材適所」という考え方をベースにしているのに対し、ジョブ型雇用は「仕事に人を合わせる:適所適材」制度と言えるでしょう。

 なぜジョブ型雇用が注目されているのか。
 ジョブ型雇用が注目されている背景の一つに、働き方の多様化があります。
 多くの企業がメンバーシップ型雇用を行っている日本では、出社して働くことを前提に、労働時間に応じて給与を支払うという考え方が主流でした。しかし、新型コロナによって、テレワークや時間差勤務など、柔軟な働き方が求められるようになり従業員を一律の時間で管理・評価することが難しくなりつつあります。

 メンバーシップ型雇用とジョブ型雇用のそれぞれの仕組みやメリット・デメリット、両者の違いとジョブ型雇用を導入する際のポイントを考えていきます。

 

    メンバーシップ型雇用とは
 メンバーシップ型雇用とは、多くの日本企業が従来から採用していた雇用形態で、職務内容や勤務地などを限定しない無限定型の雇用です。
さまざまな部署で異なる種類の仕事を幅広く経験させ、転勤によって別の地域で仕事をさせることもあります。
  メンバーシップ型雇用は日本企業に多く見られる雇用形態で、一般的に「日本型雇用」とも呼ばれてきました。
 日本型雇用は、年功序列や終身雇用といった制度とセットとして語られることが多く、雇用の安定性や長期的な視点が大きな特徴です。
 このように、あえて職務内容や勤務地域を明確に定義しない雇用方法の狙いは、OJTによって正社員人材にスキルや経験を幅広く蓄積させたり、人材配置の最適化を図ったりすることが挙げられます。

 メンバーシップ型雇用のメリット
 メンバーシップ型雇用のメリットは、会社にとって人材配置や人材開発がしやすいという点です。
 メンバーシップ型雇用では、職務内容や勤務地、労働時間などを限定しません。例えば、これまで開発部門にいた人材が、営業部に行って顧客対応を行うといったケースもありえます。
 このような仕組みによって、企業内で特定の部門の人材が不足したり、あるいは余剰人員が発生したりした時に、社内の人材を異動させることで人数を調整できるのです。組織の変更に伴って、新たに人員を削減したり外部から新しい社員を雇い入れたりする必要はありません。
 また、職務内容を限定しないため、社員には幅広い仕事を経験させることができ、社内の事情に広く精通したゼネラリストを育成できる点もメリットです。

 メンバーシップ型雇用のデメリット
 メンバーシップ型雇用のデメリットは、勤務管理が難しい点や専門人材が不足しがちになる点です。
 メンバーシップ型雇用では、社員に幅広い業務を経験させるため、専門的なスキルを身につけさせることは困難です。
 高度IT人材がますます必要とされる状況において、こういったゼネラリストを育成する仕組みは、専門人材の不足を加速させるという指摘もあります。

 ジョブ型雇用とは
 メンバーシップ型雇用と比較される雇用形態に、ジョブ型雇用があります。
欧米諸国では一般的に取り入れられており、日本でも移行に関心が高まっている状況です。
 ジョブ型雇用とは、職務や勤務地を明確に限定する雇用の方法です。
 職務内容や、勤務時間、雇用期限の有無、勤務方法などがあらかじめ定められており、それ以外の業務や勤務方法などを企業側が強制することはありません。
 ジョブ型雇用では、メンバーシップ型雇用に見られるような仕事内容が大幅に異なる部署間の異動や転勤は原則として行われません。
 そのため、企業は従業員の専門的なスキルを伸ばし、さらにその専門スキルを最大限活用することができます。

 ジョブ型雇用のメリット
 ジョブ型雇用は、専門性の強化やワークライフバランスの実現がしやすくなり、専門性の高い人材を確保できるというメリットがあります。
 従業員からすると、果たすべき職務があらかじめ決まっているので、自分の専門スキルや経験が活用できるかどうか判断しやすく、希望の職務とのミスマッチが生まれづらくなります。 

 ジョブ型雇用のデメリット
 ジョブ型雇用は、人材確保や人員調整の難しさといったデメリットがあります。
 ジョブ型雇用の企業では、ある職務に対して、その仕事を希望しており、なおかつその業務を遂行する能力がある人材を採用しなければなりません。
 一般的に、企業がジョブ型雇用のポストに求めるのは、専門性が高くその分野での経験や実績がある人材です。ただし、こういったプロ人材はもともと求人倍率が高く、ジョブ型雇用を導入しているからといって確保することは簡単ではありません。
 社内でそういった専門人材を育成する場合も、従来からメンバーシップ型雇用を実施してきた企業では、育成制度や人事制度を大幅に変更する必要があります。
 また、メンバーシップ型であれば、部署ごとの人数を調整するために、営業を経験してきた総合職人材をそれまで未経験の企画部門に異動させるといった配置転換が可能ですが、ジョブ型の場合は契約によって職務内容が明確に規定されているため、こういった柔軟な対応は難しくなります。

 アフターコロナを見据えた働き方の変化が拍車をかけるように、企業への貢献を明確にした人事制度としてジョブ型人事制度(ジョブ型雇用)を志向する企業が増えてきているように思います。ただ、一概にジョブ型といっても、企業が営む事業の性質によってマッチ度は変わってきます。
 日本企業は従来からメンバーシップ型雇用が主流だったため、これからジョブ型雇用を導入する際はいくつかのポイントに注意しなければなりません。

 ジョブ型人事制度の導入について
 職務型人事賃金制度(ジョブ型人事制度)とは、職務給制度に基づいて導入された人事制度のことを言います。
 アフターコロナを見据えた働き方改革(テレワークの導入)やDXによる仕事の変化によって、従業員一人ひとりに期待される成果をより明確にしていく動きが広がっています。
 特に大企業を中心にジョブ型人事制度の導入が進められています。

 ジョブ型(職務型)の人事制度の特徴
 現在、日本の多くの企業で運用されているメンバーシップ型の人事制度と比較して、ジョブ型の人事制度の特徴をまとめてみました。
 導入を検討するにあたって念頭に置いていただくことは、ジョブ型の人事制度がどの企業にも当てはまるわけではないということです。
 導入企業に適している企業と、そうでない企業があります。
 まず、最初に考えるべきことは、メンバーシップ型人事制度やジョブ型人事制度の特徴をしっかりと理解した上で、経営戦略に適した人事制度を選択することです。

 職務給制度のメリット・デメリット
 職務給制度は、職務(仕事)をベースにしてその価値の大きさ等により等級を区分する仕組みです。
 主なメリット、デメリットは下記のとおりです。
【メリット】
・職務と賃金がマッチし合理的
・職務内容が明確になる
・総額人件費が抑えられる
・ゼネラリストよりもスペシャリストの育成に効果的

【デメリット】
・組織や職務が硬直化しやすい
・ポスト不足への対応が困難
・職務が上がらないと賃金が上がらない
・職務評価を実施するにあたりノウハウがないと難しい

 職務給制度では、従業員の能力といった属人的な要素ではなく、どんな職務を担っているかを基準として賃金が決まります。

 職務給制度を導入するには
 職務給制度を導入する場合には、職務分析を実施し、「職務記述書」を作成します。
 「職務記述書」とはそれぞれの職務の職務内容や職責を表現したものです。
 職務給制度は「職務記述書」をもとに等級制度(ジョブグレード)に当てはめ、各人の処遇を決定する仕組みです。
 「職務記述書」の作成手順は以下の通りです。
   ①職務分析 → ②職務評価 → ③職務記述書

 日本型職務給の必要性
 職務給体系は昭和20年代に米国から紹介され、導人した企業もあったが普及しなかった。
 その理由がいくつかあります。
① 定期昇給がなく生計費カーブと不一致である。
② 人事ローテーションや配置転換を行うと給与額が上下し、ゼネラリストや多能工の育成には不向きである。
③ 1人の従業員に1つの職務だけを遂行させ、その職務の価値としての給与を支給することになると1人2役3役の慣例とは相反する。
 が主たる理由でした。

 上記の①、②、③の職務給導人阻害要因をすべてクリアすると、いわゆる米国型職務給とは相当異る職務給を創出せざるをえない(欧米の賃金と人事慣行には定昇がなく、定期人事異動もないし、1人1職務が普通です)。
 いいかえると①、②、③を日本の企業において変えることのできない慣行であるからこれらの慣行とマッチする職務給—–職務価値と成果の対価に対して支払う給与システム—–を実現したいというならばそれが日本型職務給です。
 ただし、その場合にも従来のような定期昇給を行うわけにはいかないし、人事異動の範囲は制約を受けるし、1人2役3役の場合に主担当職務を明確にせねばなりません。こうした条件をクリアするならば日本型職務給を技術的に実現できるはずです。

 もうひとつ乗り超えねばならない関門があります。それは日本の特殊事情ではなく近代産業社会に共通する現象です。それを④として挙げます。
 ④は変化のスピードが速い、という現象です。
 職務調査を行い、調査結果を分析して職務ごとの評価を行い職務賃率を求めテーブルを作成し、従業員を格付する作業が2年とか3年かかったとするとその間に職務の中味は変っています。
 もうひとつは職務調査を行い職務基準書(職務記述書)をつくっても3年後には職務内容が大幅に変化し3年前の職務価値とは食い違いが発生しジョブグレードが1段低くなったり逆に高くなっていて職務給の金額を是正せねばならない、といった現象も発生します。
 そればかりか3年間にその職務が無くなっていたり、新しい職務が発生したりすることも珍しくありません。④の阻害要因をクリアするためにはスピードが要求されます。いいかえると職務給体系の作業を1年以内で完成させ移行させる必要があり、それはまた見直し作業も迅速に行えることを意味します。

Copy Protected by Chetan's WP-Copyprotect.