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赤坂の社労士事務所

福岡市中央区赤坂の社労士事務所「赤坂経営労務事務所」の
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社会保険労務士法人赤坂経営労務事務所
代表社員 大澤 彰

どうやって自社を紹介しますか

経営

 企業はまずその存在を知ってもらわないことには経済活動が始まりません。どんな活動をしているのか、何が得意分野なのか、そんな情報が加わることで仕事につながる可能性が出てきます。
 では、各企業はどんな方法で知ってもらおうとしているのでしょうか。そのための手段として、現在多くの企業が活用しているのがホームページです。しかし、一方ではホームページはどこも代わり映えしないということもあります。自社を知ってもらうために他にどんな手段が考えられるでしょうか。

 企業のホームページ保有状況を検索すると、ほとんどの会社がホームページを持っていて、保有していないのが1割強のようです。これだけホームページの重要性が認識されているということでしょう。
 しかしながら、企業ホームページがこれだけ一般化すると、一方で「どこも代わり映えしない」ということもあります。情報は得られるけれど印象に残らないということです。

 A社は型枠工事業の会社です。建築現場でコンパネと呼ばれるコンクリートパネルを精巧に加工し、 コンクリートを流し込む型を作る職人が型枠大工です。
 A社はいまのA社長の父親が設立した会社です。
 職人の世界では子が親の跡を継ぐというのは珍しくなく、当たり前のように行なわれています。
 先代は息子に会社を継いでほしいと願ったし、息子もそれをごく自然なこととして受け止めました。
 そして、父親の跡を継ぐということは、父親がもっていたコネをそのまま受け継ぐことでもありました。
 先代が引退すると決めてから、これまでは現場で仕事に打ち込んでいればよかったA社長は、各所に挨拶回りに連れ回される日々を送ったそうです。
「私はいついつに引退します。息子が跡を継ぎます。職人を多く抱えておりますので、今後ともよろしくお願いします」
 頭を下げる父親の姿を目の当たりにして、会社を継ぐことの重みを実感したといいます。
 だからこそ、先代からの関係で来る仕事は一つひとつ大事にこなし、今に至っています。
 ですから、A社の仕事は代替わりした後もすこぶる順調でした。数年間は何の憂いもなく過ごしてきたA社長ですが、ある年を境に経営状況が一変します。
 世界的な経済不況の煽りを受けて、日本の住宅着工戸数が激減し、それがA社の経営を直撃したのです。
 とは言っても、A社が直ちに壊滅的な危機に陥ったわけではありません。他に公共工事を同程度の割合で受けていたからです。ただ、昔からのコネだけに頼ることの危険性を悟ったのはこの時でした。

 それからA社長は営業活動を精力的にこなすことになるのですが、これまで身内と言える世界だけでやってきたA社ですから、かなり苦戦したようです。
 というのも、これまでは紹介で仕事につながったし、公共工事も先代からやっていたので最初から入札資格があったわけです。
 改めて営業しようとしたとき、自分たちがどんな会社であるかを説明するのに困ったというのです。
 これまでそんな作業をしたことがなかったからです。
 加えてA社長はあまりしゃべりが上手ではないということもありました。現場で仕事をするのと、かしこまった席にスーツで臨むのは勝手が違いすぎました。
 それでも必死に頑張ったのは経営者としての責任感からでしたが、結果は芳しいものではありませんでした。
 そうした中、A社長の頭に浮かんだのは他社を訪れる際、手土産を持っていったらどうだろうという案です。
 話のきっかけがつかめるのではないかと考えたのです。
 しかし、知ってもらうべきはA社長自身ではなくてA社です。また、この手土産の思い付きを機に、A社長は毎年のお中元、お歳暮の物足りなさにも思い至りました。
 つまり、A社長はこれまで取引先に夏はゼリー、年末はハムを贈るというのがお決まりでした。かなり値段の張るものです。ところが、どうやら相手の印象には残っていないようなのです。

 せっかくお金を出してもこれでは意味がありません。そこでA社長は、今回の手土産を一歩進めて、A社のことを知ってもらうためのツールにできないかと考えたわけです。
 相談を持ちかけたのは、イベント会社に勤める同級生でした。
 要望を伝えると同級生のよしみも手伝って、やってみようということになりました。しかし、そこからはまったくA社長の予想を超える展開になったそうです。


 後日、イベント会社の担当者がA社を訪れました。A社長をはじめ社員にインタビューするためです。彼らにとって初めてのことなので戸惑いましたが、担当者としては前もって準備したものではない言葉が聞けて却って良かったとの感触を得たようです。
 インタビューが終わってからも、担当者は社員たちの働きぶりをじっくり観察しました。
 さらに、担当者は建築現場にもしばしば足を運んだそうです。
 イベント会社の担当者の熱心な仕事ぶりに触発されて、A社長はA社の取り組みについて、担当者に話したそうです。
 それは緑化活動です。
 ヒノキやヤマモモの植樹を数年前からするようになったそうです。

 ここからプロジェクトは一気に動き出しました。
 手土産の中身としては植樹樹木からヤマモモのジャムを使ったお菓子とまず決まりました。
 包装箱は型枠のコンパネを思わせる黄色にして、まるで建築現場のような装いです。そこにヒノキやヤマモモの木が大きく育ったイラストをあしらいました。 
 A社長納得の手土産を携えて営業に回ってみると、相手の反応がこれまでとは明らかに違いました。仕掛けによって話が弾みます。
 A社が新たな仕事を受注できるかはこれからの話ですが、A社長としては収穫が多かったようです。他社にはない自分たちの事業を語れるものを手に入れたからです。
 自社の魅力を紹介するのに決まった方法などありません。それこそ自分達なりのやり方でいいのではないでしょうか。

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