仕事においてのみならず、人生においても時間の使い方は重要です。時間は限られているからに他なりませんし、時間の使い方によって人の日常は大きく変化するからです。
では、一般的なビジネスマンはプライベートの時間をどのように使っているのでしょうか。
ここで、あえて問題にしたいのは、プライベートの時間の使い方のうち、「学び」に費やされた時間はどれほどあったかということです。
ネットで調べてみるとスマホやネット、メール、テレビが大きな時間を占めているという調査結果が出ているようです。
「一生勉強」という言葉はよく聞きますが、本当に実践することは難しいものです。
A社は雑貨のセレクトショップを経営する会社です。それほど大きな店舗を構えているわけではありません。しかし、A社長の熱心な経営姿勢のおかげで売上は順調なようです。
まだ創業して3年に満たないのですが、早くも2号店を3カ月後には開業する運びだといいます。
通常営業に加えて開業準備も加わって、A社長を含めて5人の社員の日常は多忙を極めていました。
しかし、そうした忙しい中で、A社長がある思いに捕われたのはまさにそうしたときでした。もちろん、新店舗の開業はA社長にとって嬉しいことです。社員も喜んでくれて、準備に汗を流してくれています。ただ、「事業を拡大してみても新しいことは何もしていないじゃないか」という自問が湧いてきてしまったのです。
雑貨を売ることで、ささやかではあっても人々の暮らしに彩りを与えているのは、たしかにA社長の誇りでした。
しかし同時に、それに甘んじてはいけないとも思えたのです。
A社長は自らに学習目標を課し、そして社員たちにも同様に学習目標を立てさせることにしたそうです。これまでA社では、個々の社員に仕事の目標を立てさせることはありました。
つまり、1カ月で△△万円の売上、新規顧客○○人の獲得、リピーターの確保……といった具合です。学習目標は初めてですから、彼らも戸惑ったようです。
しかし、出された目標を見てみると、それぞれの個性が如実に表れているようで、A社長には面白く感じられました。知らなかった彼らの一面を垣間見ているようでした。
しばらくすると、「これが効果だろうか」と思える光景が社内で見受けられるようになりました。
各自が興味をもって学んだ事柄を、ある者は熱っぽく、ある者は嬉しそうに、他の社員に話している姿を目にするようになったのです。聞く方も興味深そうに耳を傾けています。
また、仕事のやり方にも変化が現れだしたといいます。これまでだったら電話で簡単に済ませていた打ち合わせも、実際に会って相手の話を聞く社員が増えたのです。
A社長が打ち合わせに同行してみると、それは情報収集というより、まさに学んでいる感じだったそうです。
そうした日々を過ごすうち、北欧家具の歴史を学習目標にしていたB君からある提案がなされました。彼はその歴史を勉強するうちに、木製品への愛着の深さを認識するようになったそうです。
A社は雑貨店ですから家具というわけにはいきませんが、スプーンやカップを扱ってみたらどうかと言うのです。たしかに北欧インテリアの人気は日本で定着しています。試してみる価値ありと踏んだA社長は、早速店頭に並べてみたそうです。
すると、これまでの客層ではなかった若いお母さん方の支持を集めることになったのです。
それは、温もりのある見栄えと優しい手触りのおかげで、自分たちの子供にこんな食器で食べさせたいという欲求にうまく合致した結果でした。
このような一つの成果を、A社長は「学ぶ姿勢」から社員同士が刺激し合うことで生まれたものと捉えているようです。
そしてA社におけるこの変化は、個々の「学ぶ姿勢」が組織の新たな変化と成長の下支えとなる可能性を示唆しています。
また、よく「利益は後からついてくる」と言われますが、A社がたどった経緯は、その一つの形を体現していると考えます。