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赤坂の社労士事務所

福岡市中央区赤坂の社労士事務所「赤坂経営労務事務所」の
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社会保険労務士法人赤坂経営労務事務所
代表社員 大澤 彰

自社の価値を見直す機会も必要

経営

  どうしてこれだけ会社一丸となって働いているのに、いまいち利益が伸びないのだろう、というのがA社長の率直な感想であり、同時に悩みでもあるといいます。
 確かに、A社長をはじめとして、A社の社員たちの働きぶりは相当なものです。
 A社長が見る限り、遊んでいる社員など皆無で、それぞれが自分の役割をしっかりと果たしているという実感があります。
 だからこそ、A社長は首を傾げるわけです。
 どうしてわが社は利益が上がらないのだろうと。

 なかなか職が決まらない求職者がよく言う台詞に「面接で人物を見てもらえれば受かる自信はあるのだけれど、それ以前に書類審査に通らなくて」というものがあります。
 その原因の一つには、「履歴書で自分をアピールできていない」ということが挙げられるでしょう。
 つまり、履歴書で自分の価値を明確に伝えられていれば、相手の反応が変わる可能性は大きいのです。

 実はこの指摘、会社経営においても通じるような気がします。
 顧客に価値を正しく伝えられれば、無理な値下げを迫られることなく、サービスに見合った価格を提示することができます。
 A社はある町で営業する印刷会社です。世の中のデジタル化が進み、ちょっとした印刷物であれば自分たちでやってしまう傾向が拡大しつつあります。
しかし、やはり素人仕事とプロの技術との差は歴然で、仕上がりに対する諸々の気配りまで考えるならば、大切な印刷物はA社に任せたいという顧客も多いのですが、ライバルが多い業界であるため、受注数自体が減少傾向にありました。
 特にここ数年は、社員に負担がかかる割には一向に利益が上がらない。
 A社長は、「このままでは、会社の将来は先細る一方だ。いったい何が原因なんだ」と、改めて会社の現状を分析してみることにしたそうです。
 まずは、過去の仕事を見直してみて、それぞれの仕事がどれほどの営業利益を上げたかを確認してみたそうです。その作業によって明らかになったのは、取引先によって利益率に大きな開きがあった、ということでした。
 つまり、ある仕事で利益を計上しても、他の仕事が赤字であったために、赤字が黒字を食い潰している状況にA社はあったのです。
 新規顧客を開拓しなくては、会社の未来はない。
 しかし、新規契約を獲得しようとすると、熾烈な価格競争にばかり巻き込まれて利益が出ない。

 確かにA社では、高い印刷技術や納品に至るまでの仕上げ、何よりも顧客が満足するサービス提供を心がけてきました。
 しかし、それが他でもない、顧客にしっかり伝えきれていないのではないかという考えに至ったのです。
 それは「良いものはいつか分かる」という考え方です。
 それは確かにそうなのでしょうが、「分かる」までの時間をできる限り短縮するのが経営者の仕事であり、それができていなかったために、結局、漠然とした「一生懸命さ」だけが売りになってしまっていて、自社の技術・サービスが市場においてどのような価値をもっているかを自分たちで把握することも、それを顧客に的確に伝える努力も実は怠っていたのではないか、と振り返っています。

 丁寧な印刷の仕上げは、A社にとっては当然のことで、何もわざわざ営業先で説明する必要はないと思っていたそうです。
 しかし、印刷の需要が縮小していくなか、自社の価値を取引先にいち早く理解してもらうには、まずは自分たちが自社の価値を語れなければならないといいます。
 A社長が特に難しいと感じたのは、自社の強みを、あえて言語化する作業だったといいます。
 言語化することで、「曖昧さ」はそぎ落とされ、明確に自社の価値を語れるようになり、結果的にひとつひとつの仕事の単価アップも実現したのです。各企業の特徴ある商品やサービスも、「言語化」されていなければ、差別化にはつながりません。
 価格競争が激しい今だからこそ、自社サービスの強みを見直す機会をもってみることも、一考の価値があると思うのです。 

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