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赤坂の社労士事務所

福岡市中央区赤坂の社労士事務所「赤坂経営労務事務所」の
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労働・社会保険の諸手続や助成金活用、給与計算、就業規則の
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社会保険労務士法人赤坂経営労務事務所
代表社員 大澤 彰

「仕方がないムダ」と悟りきる前に

経営

 事業を営んでいれば、それがどんな分野にしろ、「仕方がないムダ」は出てくるものです。人材育成にしても、営業活動にしても、企業活動のすべてがそのまま全部成果につながることは、ほとんどありません。ただ、「仕方がないムダ」を当たり前に受け入れてしまっていいのでしょうか。

 令和2年10月2日、厚生労働省から、令和2年(2020年)8月分の一般職業紹介状況が公表されました。これによると、「有効求人倍率(季節調整値)」は1.04倍となり、前月から0.04ポイント低下しました。
 8カ月連続の減少で、平成26年(2014年)1月以来の低水準になったということです。
 また、同日、総務省から公表された令和2年(2020年)8月分の「完全失業率(季節調整値)」は3.0%で、前月から0.1ポイント上昇しました。
 完全失業率(季節調整値)が3%台となったのは、平成29年(2017年)5月以来だということです。
 新型コロナウイルスによる内外経済低迷で、雇用情勢の悪化が継続しているようです。

 ところが一方で、内定を得ながら入社を辞退するいわゆる「内定辞退者」もかなりの数にのぼっています。
 内定者増減もさることながら、あるメーカーの担当者の「受験者同士の交流を深めさせたことで良い人材の歩留まりが高く留まった」という発言がありました。
 「歩留まり」という言葉が出てきています。この発言には「ある程度の内定辞退者は想定済み、仕方がないこと」という前提があります。
 この「仕方がない」に注目しました。
 事業のいろんな場面で出てくる「仕方がない」をどう考えるかです。

 A社は食品加工会社です。扱う商材はズワイガニ一本で、産地の港からすぐのところに事務所と工場を構えてもう20年になります。
 ズワイガニといえばタラバガニ、毛ガニと並んで日本の三大ガ二に数えられていますが、「カニの王様」と呼ばれるだけあって、なかでも人気は高いようです。
 A社の主力商品はカニの脚です。キロ単位で販売していますから、食べるところが多い脚だけを集めた商品はお客様にとってお得感が高いわけです。
 しかし、どんなにやってもお客様が求めるものに限りはないというのが商売でしょう。
 A社の場合、身がどうしても殻に残るから、上手な食べ方を教えてほしいというメールが何通か届いたのです。

 この要望に対して、A社はカニ汁を提案したそうです。身がかすかに残った殻でも煮込めば濃厚なダシが出ます。レシピを郵送し、さらに同じものを公開しました。
 カニを「ムダにしたくない」気持ちからのものであり、それはA社長も同じでありながら、これまで放置してきてしまったという思いがあったからです。
 A社ではカニの脚を食べやすいように加工するのに、殻を剥きます。この殻を廃棄処分していたのです。どこかでもったいないと思いつつも、「カニを食べやすく」というお客様の要望に応えるために、「仕方がない」と割り切っていました。
 「避けられないムダ」と捉えていたのです。

 それ以降、A社長は自社の避けられないと「思っていた」ムダを見直してみました。
 まずはメールでも相談があったどうしても殻に残るカニ身です。A社では熟練の社員が身を取り出して棒肉にし、主に飲食店に納めていました。
 それでも身を100%使い切るまでには至っていません。そこで考えたのが、遠心分離機を使うことです。社員が身を取り出した後の殻を高速回転させることで、わずかに残った身まですべて取り出したのです。この身は缶詰用に使用されることになりました。

 次は殻です。これまでA社では大量の殻を廃棄してきました。主力は脚肉ですが、他にもカニ爪、カニみそなどを利用して、多数の商品を揃えています。
 それらの加工過程で廃棄されるカニの殻は膨大な量でした。これらの殻をすべて捨てることなく上質のまま保存することで製薬会社と取引が成立しました。
 カニの殻に含まれるキトサンが目的です。食物繊維でコレステロールを抑えるなどの効果が確認されています。

 さらに、お客様へのA社からの回答となったダシにも着目しました。
 A社では毎日のように大量のカニを茹で上げます。一度火を入れたほうが日持ちしますし、届いたら手間いらずで食べたいというニーズに合致した茹でカニは人気商品です。
 問題は、茹で汁でした。殻から良いダシが取れると回答しながら、一番ダシとも言える茹で汁をA社では捨てていたのです。
 これも有効活用するようにしました。つまり、濃厚なダシとしてパック詰めし、商品として飲食店に出荷するようにしたのです。

 「歩留まり」という用語があります。「原料(素材)の投入量から期待される生産量に対して、実際に得られた製品生産数(量)比率のこと」です。
 その比率が高いほど、生産性や効率性が高く、利益が高いとされます。
 歩留まりの考え方は、主に製造業で使われます。「どれだけの材料でどれだけの製品を作るか」が製造業の課題ですから、当然と言えます。
 飲食業も製造業の一種ですから、もちろん歩留まりは経営上重要な要素です。

 A社にしても同じでした。一杯のカニをどれだけムダなく有効に使い、そこから利益を生み出すかが問われたわけです。
 仕方がないムダとして廃棄物を出していた以前と、今の歩留まりをA社長は比較してみたそうです。以前は60%程度でした。歩留まりは重さを基準にしてしまうから、捨てていた殻がいかに多かったかということです。

 歩留まり率の向上は利益率のアップに直結します。A社では浮いた資金を社員の待遇向上、設備投資、商品開発などに費やし、さらなる好循環を生み出しているそうです。
 A社の好循環を生み出したのはなんでしょうか。これまで「仕方がないと諦めていたムダ」を見直したことにあります。
 どんな事業であっても、投下したコストのすべてが利益となるわけではありません。そこにはどうしたって仕方がないムダも生じることでしょう。
 しかし、そのムダは本当に仕方がないと諦めていいものなのでしょうか。A社では、茹で汁までも役に立つものとして利益に変えました。
 こうしたことは、どんな事業にも潜んでいるのではないでしょうか。仕方がないと諦める前に、もう一度自社のムダを見直してみてはいかがでしょうか。

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