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赤坂の社労士事務所

福岡市中央区赤坂の社労士事務所「赤坂経営労務事務所」の
COLUMNです。
労働・社会保険の諸手続や助成金活用、給与計算、就業規則の
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社会保険労務士法人赤坂経営労務事務所
代表社員 大澤 彰

人事考課と経営理念の関係は

人事・労務

   今年も冬季賞与の人事考課を終え、ほとんどの会社ではすでに賞与を支給されたことと思います。
 人事考課は社員にとって一大事です。だからこそ、簡単に不満の種にもなり得るし、発奮材料とすることもできます。人事考課は会社の将来を担う人材を評価するものですから、社員にはっきりとした未来を描かせるものであるべきだと思います。
 人事考課が会社の将来にどのように関わるかを見ていきます。

 A社は経営も一応は安定しています。ただ、気になることがまったくないというわけでもなかったようです。
それは「若い社員が居つかない」ということです。A社には不定期で若手社員が入社してきますが、彼らのほとんどは1年程度、長くて2年で辞めていってしまうのです。
 A社長には「これでは社員の平均年齢が上がっていくばかり」という将来を危ぶむ意識もありましたが、それよりも「近頃の若い者は根気がないな」と、辞めていった者たちへの憐れみのような気持ちの方が大きかったといいます。

 しかし、そんな余裕を吹っ飛ばす出来事が起こりました。右腕と信じていたBさんが突如、「来月いっぱいで辞めさせてもらいたい」と申し出てきたのです。
 「このまま会社にいても、将来が見えない」
 これがBさんの漏らした退職理由でした。

 
技術があるBさんはもっと高いレベルで仕事がしたかったし、もっといろいろなことを覚えたいとも思っていました。また、若い社員が辞めていくことをA社長が意に介していないこともBさんには不満だったようです。
 つまり、会社がどこへ向かいたいかがまったく見えないことが、Bさんの不満であり、不安でもあったのです。

 Bさんの言わんとするところはA社長も分かりました。
といってすぐにどうこうできる問題でもありません。
 A社長は必ず改善することをまずは確約し、Bさんを必死に慰留しました。
 そう言われるとBさんも会社に愛着があります。とりあえず半年の期限を切って、それで変化がないようなら辞めさせてもらうことを条件に会社に残ることにしたそうです。
 しかし、Bさんが求めるものは、いわゆる「経営理念」というものでした。話し合いはしてみても、どうも断片的に思えて根本的な変革という感じがしません。
 ところが、ある日ヒントは思わぬところにありました。
 それはA社長が大好きなナイター中継を見ていた時でした。
 ヒーローインタビューでお立ち台に上がった選手が力強く言った「チームの勝利」「優勝」という単純な言葉でした。
 単純ですが、明確な目標だと思いました。
 それでいいんだ、とも気づかされました。
 A社長は気恥ずかしくて心の奥底にしまっていた言葉を「経営理念」として、臆せず表に出してみることにしました。

 この言葉を口にするまで1カ月かかってしまいましたが、「いいんじゃないでしょうか」とのBさんの頷きに、A社長はやっと第一歩が踏み出せた気がしたそうです。
 そして早速、この大方針を全社員の前で発表したといいます。
 A社の場合、経営理念がはっきりしていなかったために、何をもって社員を評価するかも曖昧でした。当然と言えば当然です。
 人事考課と経営理念は元々、分かちがたく結びついているからです。
 人事考課の目的の一つは、適切なフィードバックによる教育にありますが、その基準は何に置くべきでしょうか。いろいろ考えられはしますが、経営理念を基準にすれば会社としてブレのないしっかりした軸が通るのではないかと思います。

 経営理念は経営者の頭の中だけにあっても役に立ちません。社員に浸透し、実践されてこその理念です。そして経営理念が人事考課に反映され、教育制度の土台となることも、経営理念の実践の一つではないでしょうか。

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