人材を採用するためには「働く条件」の向上が必要ですし、採用された人材が、十分に教育や指導が受けられるという安心感を持たせることが重要です。
大組織では持てない価値を中堅中小企業が実現するとしたら。そんな視点に立てば「人材」の採用育成の基本視点も大きく変わります。
最近では有効求人倍率が「1倍」を超えています。
有効求人倍率とは、
有効求人数(企業の採用希望者)÷有効求職者(働きたい人)
つまり求職者1人に対してどのくらいの求人があるのかを示したものです。有効求人倍率が1倍を超える場合は求職者(仕事を探している人)よりも求人数(人材の募集)の方が多く、1倍を切る場合は求職者(仕事を探している人)よりも求人数(人材の募集)の方が少ない状況にあります。
一般に有効求人倍率が1倍を超える場合は人材の募集が多いため好況、1倍を切る場合は人材の募集が少ないため不況とされています。また、一般に有効求人倍率は景気の一致指数と捉えられ、完全失業率と並んで雇用動向を把握するのに適した指標とされています。
この倍率が1を超えれば、かってのバブル期のように、売り手(働きたい人)市場が再来してしまうことになるわけです。
ただ、中国等の豊かな海外人的資源を考えると、極端な売り手市場が再来するとは考えにくいのですが、人材採用が難しくなることを意味していることになります。
こうした流れを受けて、企業がどのような考え方や工夫をされているかを伺いました。
お話を伺う中で、有効求人倍率がどうであれ、中堅中小企業には優秀な人材は来てくれない。どうすればよい人材が雇えるか教えて欲しいというものが多かったのですが、中にユニークな見解もありました。
たとえば、A社長は「自社の業務として商品出荷業務を取り込むと、担当者の指導が大変になる。しかも指導は大きな手間の割に効果に乏しい。しかし、出荷から運送までを事業としてやっている会社が世の中にはたくさんある。そこに外注して、自分は文句を言う立場をとると、様子が変わって悩みも減る」と捉えておられるのだそうです。
まず「人」を見て、その人に任せる仕事を考えるのではなく、先に必要な仕事を十分に把握してから「誰に任せるか」を考えるなら、特に、総務、経理、業務の分野では外注できる仕事がたくさんあるし、時には営業でさえ「営業代行「を起用するケースも出るらしいのです。
「外注」を基準にするもう一つのメリットとして、業務をすべて外注しているわけではありませんが、「外注すればいくらで済む」という感覚は、社内の賃金を決める時にも非常に大きな目安になるし「かなり説得力のある基準になる」そうです。
それに、従業員まかせで「ブラックボックス」になる仕事が少なくなる分厳しいマネジメント姿勢がとれて、教育指導もかなり明確で取り組みやすいものになるようです。
中堅中小企業の経営者が、大企業の人材管理者と同じような仕事に追われ、自分自身の技術や技量を更に高める気概や機会を失ってしまったら、社会的存在意義までも怪しくなるというのがA社長の考えです。
そのため、自分自身の技術や技量との関係が薄い仕事は、極力外注して身軽にするとともに、「同志のような存在」を探して切磋琢磨する方が、実りの多い経営ができるのではないかということです。
「人を集めて組織を作って、その管理者になる」という発想から、専門性をさらに磨くための組織づくりを行うという考え方への移行は、複雑化した現代での一つの方向を示しているように思います。
今、考える人材の採用と育成
