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赤坂の社労士事務所

福岡市中央区赤坂の社労士事務所「赤坂経営労務事務所」の
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労働・社会保険の諸手続や助成金活用、給与計算、就業規則の
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社会保険労務士法人赤坂経営労務事務所
代表社員 大澤 彰

賞与をどのように決定するか

人事・労務

 ボーナスと聞くと、その支給日もさることながら、どうやって支給額が決まるのかという点にも関心が集まります。「この夏は会社の業績が良いから、ボーナスは増えそうだ」「仕事を頑張ったから、ボーナスは期待できそうだ」と話している人もいる一方、「欠勤が多かったから、ボーナスはどうなるのだろう」、「新入社員だから、ボーナスは無理かな」、「育児休業中だけど、貰えるのかな」と心配している人もいるでしょう。

 賞与の起源を探っていくと、江戸時代の商家における慣例まで遡ります。賞与制度は明治時代に一部の企業で業績や勤続を評価する形での賞与支給が始まり、大正時代に入って次第に広がりましたが、昭和時代でも戦前には一部の企業にとどまっていました。

 本格的に普及したのは戦後のことです。戦後の厳しい経済状況下で生活補給金、インフレ手当、越冬一時金などという名目で臨時給与を支給しましたが、経済の安定とともにその名称、意義を代えて今日に至っています。

 さらに企業間競争が激化し、実力主義賃金への必要性が高まるにつれ、賞与の成果配分に実力と実績を強く反映させる傾向が出てきました。こうした動きに直面して、賞与の成果配分とは何かを改めて確認し、その上で自社の賞与制度のコンセプトを明確にする必要があるのではないかと思います。

★賞与の性格

賞与の性格分類を支払う側(企業)ともらう側(従業員)とで分けて考えてみます。

 (1)企業の立場からみた賞与の性格付けは5つあります。

①社会慣例的性格                                ②賃金後払的性格                                  ③利益配分的性格                                ④労働意欲刺激的性格                      ⑤人件費調節機能的性格

(2)一方、従業員の立場からみた賞与の性格は3つあります。

①世間相場                           ②生計費の赤字補填                       ③会社業績への貢献

(3)対応する賞与の性格

①社会慣例的性格  →  ①世間相場                         ②賃金後払的性格  →  ②生計費の赤字補填                     ③利益分配的性格  →  ③会社業績への貢献

 企業の立場からみた賞与の性格のうち、労働意欲刺激的性格、人件費調節機能的性格 は企業が強く打ち出すと従業員から反発を受けるおそれがあります。

 ★法律的には

 毎月の月額給与については、労働基準法で最低賃金や毎月払い、直接払い、残業の計算方法など、いろんな取り決めがありますが賞与に関しては、全くその定めはありません。 一般的に夏(7月か8月)と冬(12月)に支給している企業が多いですが、最近は自社の決算にあわせて支給する決算賞与や3ヶ月ごとに業績に連動して支給する賞与などを取り入れる企業も増えてきています。

 つまり、賞与は会社がその支給方法から支給時期、金額などを自由に決めることができるのです。すでに就業規則や雇用契約書に賞与の支給を約束しているとそのルールに従わなければなりませんがそれ以外は会社の裁量がかなり認められるのです。

★賞与は何のために出すか

 賞与の考え方は会社によって様々ですが、一般的には次のような考え方をしている企業が多いようです。

・賃金の一部(賃金の後払い)

 限りなく月額給与に近い考え方です。過去においては生活に必要な生活給的に考えている企業も多かったようですが、最近は徐々にこの考え方は減ってきています。  ただ、「正月の餅代に、月給の1か月分程度の賞与は出したい」といった考えの経営者も多く、夏冬1か月分賞与は固定で支給するというルールや暗黙値のある会社もあります。

・利益の分配

 もっとも一般的な考え方です。

 賞与は、会社の業績がよく、利益がでている時だけ、その利益を社員に還元するという考えです。

 赤字であれば、賞与0もあるということです。

 給与規程には、この原則を書いておくべきでしょう。

・将来への期待

 過去の努力や業績に対するだけでなく、将来に向かってがんばって欲しいという期待値をこめて賞与をだしているという感覚の経営者も多いようです。

★賞与原資はどのように決定するか

・会社の利益の一部

 もっとも原則的な考え方です。

 賞与は法律的に絶対にださなければならないものではありません。社員のモチベーションについては十分に配慮しなければなりませんが、赤字の企業が賞与をだすことは会社そのものの存続をを危うくさせることに繋がります。

 利益のどの程度を賞与にまわすかは、難しいところですが過去の支給水準や、業界の平均的な労働分配率を参考にすると、ひとつの目安になります。

・月額給与の〇か月分を原則に

 企業側からすれば、「利益の一部」とするほうが合理的なのですが社員の立場からすれば、やはり基本給の○か月分、などがわかりやすいものです。

 この2つの要素を見ながら、自社の今後の資金計画なども考え賞与の総額原資を決定すべきでしょう。

★賞与決定の具体的要素

 賞与を決定する要素は、昇格や昇給決定の要素よりも思い切った特徴をだすことができます。

 主なものとして、次の要素を上げることができます。

●業績・成果

 もっとも、賞与の決定要素に適しているものだと言えるでしょう。  業績・成果であっても、会社業績なのか、部門業績なのか、個人業績なのかによって、違ったメッセージになります。

●発揮能力・仕事のプロセス

 成果を具体的に評価しにくい職種などでは、こちらがメインの要素になることが多いでしょう。

●勤務態度・勤怠など

 もっとも基本的な要素ですが、差をつけるのが難しいという面もあります。

 初級等級の社員の賞与要素としては適しています

●勤続年数、年齢

 属人的な要素になります。

 以上のような、要素を組みあせて、最終的な賞与支給額を決定します。

 最近、人事ではあらゆることに「意味づけ・ストーリー」をもたせることが重要だと言われるようになってきました。

 賞与を支給するにしても、ただ「がんばったから」、「業績がよかったから」という漠然としたものでなく、「あなたの〇〇に対して賞与を支給します」ということを、明確にしておくことが会社からのメッセージとなり、本人のモチベーションにつながるでしょう。

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