当然ですが、残業時間の管理はとても重要です。
なぜならば、残業手当の支払いの問題もありますが、従業員の健康管理の問題が大きいからです。
この残業の問題について「現象」からではなく「底流」からとらえ直してみると、新たなものが見えてくるのではないかと思います。
「成果」感覚の経営者と「時間」感覚の従業員のギャップです。
たとえば、いわゆる散髪を行う理容店で、鏡の前に座った客が、希望する髪型を決められず、結果として1時間も時間をロスしても、理容店経営者の収入は増えません。事業は時間ではなく成果で動くものだからです。
しかし、その理容師がたまたま従業員で、1時間のロスのために残業が発生したとすると、法律上は、その従業員は残業手当という追加収入を得ることになります。
成果ではなく時間が収入を増やしたわけです。しかも、その従業員の残業手当は、理容店の収入から支払うわけで、決して客からとれるわけではありません。
そして、この業績感覚と時間感覚のギャップが、しばしば、経営者と従業員の間の溝を感じさせるのです。
人の問題を考える上で、非常に重要なポイントの1つは、「限度をわきまえる」あるいは「終点を見つける」難しさです。私たちにはどうしても、もっと良くしたいという欲求やこれで大丈夫だろうかという不安が付きまといます。
一般的に、まじめな人ほど、ついつい際限なく働いてしまうのは、否定できない事実でしょう。それは常に責任には、それが果たせるかどうかという不安が付きまとうからです。
その際、成果感覚の経営者なら、不安を解消するためには成果を出さなければならないと考えますし、成果が出れば、それがそのまま余裕に変わります。
ところが時間感覚で働く従業員が不安に襲われた場合、成果で自分をコントロールするのが難しく、時間の限界まで働くことで不安に対処する傾向があっても不思議ではないしょう。
残業は「忙しい」から発生するとは限りません。そして、もちろん、残業が増えたから利益が増え、事業が成長するとも限らないでしょう。逆に、過剰な「不安解消型残業」が、従業員の心身を消耗させ、成長へのエネルギーを害しているかも知れません。
では、どうすべきなのでしょうか。
まずはこのような兆候が現れると早期に対処する環境作りが必要でしょう。
つまり、自宅での仕事も含め残業の実態を明確に把握することをベースに、労働時間が目立って長い従業員の業務内容をチェックし、OKな部分にはOKを出し、不足部分は完成までの手順と日程を指導することが重要だということです。
以上、残業問題をやや別の角度から見て行きましたが、残業に関する就業規則整備やトラブル回避のマネジメントも、もちろん欠かすことはできません。
残業問題を別の角度から見たとき
