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赤坂の社労士事務所

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社会保険労務士法人赤坂経営労務事務所
代表社員 大澤 彰

ライバル会社に就職できない?

人事・労務

ある社長から、社員が退職するにあたり、退職時の機密保持誓約書で競合他社へ就職出来ないということはできないかの相談がありました。
まず、競業避止契約について確認してみます。

競業避止契約とは、役員や社員が同業他社へ就職すること、または競業関係にある事業を開業することを一定期間制限することを内容とする、使用者と役員・社員との契約です。
取締役は会社法で競業および利益相反行為が制限されており、社員は在職中においては個別の同意や特約がなくても信義則により競業避止義務を負うとされています。
一方、役員、社員が退職した後在職中に習得した技術、知識、経験を生かし職業を選ぶのは各人の自由であり、これを制限するのは職業選択の自由(憲法22条)に反します。
しかし、使用者のみが有する特殊な知識や顧客等の情報等の営業秘密の保護は正当な目的を有するものとして、社員等との特約により一定範囲において競業を禁止することは認められています。
競業避止義務違反が認められた場合は、使用者は社員等に対し損害賠償請求ができます。営業秘密の漏洩等により営業上の不利益が侵害され、また、侵害されるおそれのあるときは差止め請求ができます。

競業制限の有効性は使用者の営業秘密保持の必要性、社員等の従前の地位、職務内容、退職後の業務内容、制限期間、場所的範囲、代償措置の有無等を要素として総合的に判断されます。
この社員等の従前の地位・職務内容については使用者の営業秘密に直接関与する立場にあったものであることが必要です。
また代償措置は制限の合理性を判断する要素として重視されます。

在職中の競業行為が認められないことはもちろんですが、退職後について競業避止義務を課すことについては、職業選択の自由を侵害し得ること等から、制限的に解されています。
この点、古い判例ですが今日においてもしばしば参照されている判例(奈良地判S45.10.23)は競業避止義務契約について「債権者の利益、債務者の不利益及び社会的利害に立って、制限期間、場所的職種的範囲、代償の有無を検討し、合理的範囲において有効」であるとしています。
このように競業避止義務契約の有効性について争いとなった判例においては、多面的な観点から競業避止義務契約を締結することの合理性や契約内容の妥当性等を判断しており、近年の判例における判断のポイントについて理解しておくことは、競業避止義務契約の導入・見直しを検討する上で重要です。

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