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赤坂の社労士事務所

福岡市中央区赤坂の社労士事務所「赤坂経営労務事務所」の
COLUMNです。
労働・社会保険の諸手続や助成金活用、給与計算、就業規則の
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社会保険労務士法人赤坂経営労務事務所
代表社員 大澤 彰

社員の「気持ちを引き出す」方策

人事・労務

   会社というのは、得てして経営者の思いがなかなか社員に伝わらなかったり、またその逆に社員は自分たちの考えを経営者が理解してくれないと思ったり、ということが起きがちです。
 しかし考えていただきたいのは、経営者が不満に思うような社員の行動を会社側が作り出している可能性があるということです。

 A社は建築資材のメーカーです。過去にはいくつかのヒット商品を生み出し、経営は堅実と言っていいでしょう。創業以来、赤字になったことはなく、どんなに経営環境が悪化しようと、幅はありながらも、これまで常に黒字を計上してきました。
しかし、ここ最近はA社長には気がかりなことがあります。社内に倦怠感が漂い始めている気がするのです。
 具体的にここがいけないというところまでは掴んでいないのですが、出社して社員の顔を眺めてみると、どこかしら元気がないのです。
振り返ると、経営幹部を集めて定期的に開いている商品会議での提案が極端に減っています。
 これも社員が元気を失っていることの表れと思われましたが、それがなぜなのか、原因はどこにあるのかを掴みかねていました。

 そんな折、大学時代の友人と飲む機会がありました。
 飲むとA社長は個人的な悩み事をついつい口にし、「社員の元気がなくて新たな提案が減っている」と。
 「それは逆じゃないか」とBさんは言うのです。
 つまり、新たな提案が減っているという現象が、社員の元気を奪っているという結果ではないか というのがBさんの考えなのです。
 Bさんによると、人の行動を決定づける3要素があるそうです。
それは「消去」「弱化」「強化」の3つです。
 つまりBさんが言うのは、A社では新提案をするのに対して何らかの「消去」や「弱化」が起こっており、それ故に新提案が減っているのではないか。その結果として、社内の元気が失われているのではないか、というのです。

 要は、元気がないから新提案が減っているのではなく、新提案という行動が「消去」「弱化」されるから元気がなくなっているというのがBさんの見解です。
A社長はこれまで元気がない原因が分からないと感じていましたが、その原因を掴んだ気がしたそうです。
 翌日からA社長は、社員とのミーティングの機会を持ち、社員の声に耳を傾けました。

 総合すると、こうです。ほぼ共通して聞かされたのが、自分たちが新しい提案をしても、上司に「できない理由」を説明されて却下される、あるいは「検討する」と言われるだけで、いつ結果が出るか分からない、というのです。
 また、開発部門の社員はこう言いました。自分たちの役割は「新製品で売上を上げること」なのは分かっている。しかし、そこに至るまでには長い時間が掛かる。上司からの突き上げも厳しく、結果が出るまで自分たちは何も会社に貢献していないような気になってしまう、と。

 ちなみに、彼らが言う上司とは、商品会議に出席する幹部社員のことです。
 上司たちにとっては彼らなりに会社のためを思った行動であったのでしょうが、結果的にそれが会社に倦怠感をはびこらせていたのかもしれません。
 そこでA社長は「強化」につながる制度を作ったのです。
 社員からの新提案に対して、それがどんなものであろうと、500円の報奨金を与えることにしたのです。提案に対して必ず500円のご褒美が貰えるのですから、これは「強化」です。
 A社長が無条件で500円の報奨金としたのは、新しい提案、改善の意欲の大切さを伝えたかったからです。
 不思議なもので、どんな提案でも500円が貰えるとなると、くだらない提案をいくつも出してくる事態が想定されますが、そんなことはなかったそうです。
 たかが500円されど500円で、報酬を貰うからにはいい加減なものは出せないという心理が働いたのでしょうか。

 A社の経緯を見ると、社員の心理というものは、会社の活気・業績に深く関わっていることが今更ながらに分かります。
 意識しないままに、社員の行動を「消去」「弱化」してはいないでしょうか。
社員の良い行動を強化する「制度」を会社が創設するのも会社を発展させ、社員を幸せにする一手ではないでしょうか。

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