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赤坂の社労士事務所

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社会保険労務士法人赤坂経営労務事務所
代表社員 大澤 彰

部下から見た上司と二人の課長

人事・労務

 いわゆる中間管理職とは大変な仕事です。上からは結果を求められ、そのために自分に過重な労働を課し、体を壊してしまう例も少なくありません。また、仕事をうまく切り回すために、下に対しては人間関係を工夫する必要もあるようです。
激励、叱責、称賛……と、アメとムチはさまざまに使い分けられます。
 それでもなかなかうまくいかないのが、まさに中間管理職の仕事の大変さと言えるでしょう。

 実際、部下は上司をシビアに見ているものです。
 そこで上司の頑張りを無駄にしない部下のやる気の引き出し方について考えてみます。
 A社は食品を扱う商社で、営業部は30名と大所帯で、これは全社員の約6割を占めます。そして営業部はその扱う商材によって一課と二課に分けられているそうです。
 それぞれの課を束ねるのがB課長とC課長です。商社にとって営業職は非常に重要な役割で、A社の将来は二人の課長の双肩に掛かっているというのは、全社員にとってある程度共通した認識でした。
 そんな重要なポストを任されている二人ですから、共に仕事ができるのは言うまでもありません。

 ただ大きく違ったのは、仕事の進め方でした。
 一課の商材の営業には「攻めの姿勢」が必要なようで、B課長は社内ではイケイケの性格で知られています。
 一方、二課長の椅子に納まっているのがC課長であり、扱っているのは、非常に需要は多いのですが、それだけに競争は激しく、取引先との密な連絡は欠かせません。
 C課長は、綿密さを要求される仕事に打ってつけの人物と社内で目されています。


 A社では、営業部長が来年には定年を迎えるため、次にそのポストに就くのはB課長かC課長であるのは明らかで、この出世レースは社員たちの関心の的になっています。
 二人を課長に抜擢したのはA社長ですから、彼らの性格はよく知っているつもりです。しかし、課長に登用した最大の理由は、二人が「必ず結果を出す」ことでしたから、改めて、「経営幹部としてどちらがふさわしいか」という観点で見てみると、判断材料に乏しいことにA社長は気づいたそうです。
 そこで再度彼らの仕事ぶりを見極めてみようと思い立ったのです。

 評判にたがわず、B課長の働きぶりはエネルギッシュそのものです。部下への指示も素早く、的確であるとA社長の目には映ります。
 一方、C課長の仕事の進め方はというと、ある意味でB課長とは正反対であると言えそうです。明らかに書類に目を落としている時間が長く、部下を呼びつけたと思ったら、椅子を勧めて何やら20分も30分も話し込んでいます。
 スピード感という点では、どうやらB課長に軍配が上がりそうですが、そう簡単に判断は下せません。
 ここでA社長は、「経営幹部にふさわしいのは」というのが観察の目的であったことを確認します。「経営幹部に」ということならば、彼らの周辺にまで目が向けられて然るべきです。
 以来、A社長の目は二人の課長の部下へと向けられることになりました。そうして視線をずらしてみると、思いがけないものが見えてきたそうです。
 それは決して小さなものではありませんでした。

 一見すると、一課の社員たちはB課長の覇気に引っ張られて精力的に動き回っているように思えます。しかし、さらに綿密に観察してみると、部下たちは「B課長の言う通り」に動いていることが分かります。
 他方、C課長は部下に対して、いわゆる「命令」という形を取っていません。部下とのやり取りの中で答えを見つけていくのが彼のやり方のようです。

 その様子と比べてみると、一課の社員たちの表情は情熱的なようで、その実、テンパッているだけのようにも見えます。よくよく眺めてみると、一課員の働きというのは、B課長が頭に描いた通りの結果であって、それ以上でも以下でもありませんでした。
 しかし、二課の場合は違いました。C課長と部下とで練り上げた計画以上の成果が、時にもたらされたのです。
 この違いにA社長は着目せざるを得ませんでした。

 それは「部下への接し方」でした。C課長のやり方というのは、まずは「部下の考えを全面的に受け入れてみる」というものでした。
部下が自分で納得した上で違う方法をとるよう促していたのです。
 命令、強制を基本とするB課長との一番の違いはここですが、ノルマをこなすことに必死な一課員と伸び伸びと成果を出す二課員にこそ、最大の違いを認めたのでした。

 「会社の将来」を考えた時、リーダーがいなければ動けない社員、リーダーの思惑を超えて結果を出してくる社員、この違いを見れば結果は自ずと明らかなような気がします。こうした違いは、「部下のやる気をどう引き出すか」の違いに起因している気がします。     経験上のアドバイスを加味しながら、部下のこうした気持ちを損なわないで十分にやる気を引き出してやることこそ、リーダーの仕事なのだと思います。

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